「母胎住箱」とは・・・
 人は、母の胎内から生まれ、地という母胎に戻る。その間に人はあらゆる経験をし時を過ごす。当然、あらゆる人間が様々な経験をし、全く同じ経験を持つものはいない。

 今日、社会では全てのメディアの拡張が形成されているといっても過言ではない。人間はメディアの拡張に対し無関心を装い、見えない快楽を得ている。メディアの拡張は身体の拡張であり、それを否定する事が不可能となる社会を人間自らが創り出したのである。あまりにも身体を拡張し過ぎた現在の社会は、自分の身のより所を失いつつある事に気づくのである。一部の社会では、破滅的な結果をもたらしている。ビックバーンのように、誰もがメディアの拡張する勢いを止めることはもう不可能に近い。本来メディアとは、人間に快楽を与える為に発展してきたはずであったが、現実はその拡張するスピードについて行く事だけに必死となりメディアに縛られている事を感じるようになっている。同時に、それ無しで生活する事が不可能となっている自分に気づき、ようやくメディアに支配されている事に不安を抱き始める。その様な勢いからわが身を守る為には、やはりメディアによって制御しなければならないのである。

 自らの身体を守るメディアの一つとして「In Cube」「In ZEBRA」を提案する。この建築は、独りで住む事を前提として創り出されたモノであり、前述したような「あらゆるメディアによって拡張された社会」という戦場で働く人間の為に、「母胎」という「住箱」を提案し、自らを守り、安心と快適さを与えてくれた「胎内」空間と同等以上となる空間を提供する事を意匠設計としている。

 今日、青少年等の犯罪等、暗いニュースが続く中、建築設計を業としている私にとっては、多少の責任を感じざるを得ない。この建築はどちらかと言えば、この暗い社会に対応する為、緊急に生み出されたと言っても過言ではないが、近い将来、このようなデザインの必要性が、一時的なモノであったと思えるような社会に変わって行く事を信じて止まない。


母胎住箱-1 「In Cube」 2000年6月 神奈川
共同住宅/新築








 





  





戻る


写真・文章等の無断転載はご遠慮ください。