「ひょうたんの家」 2006年8月 東京都
個人邸/新築
衣服の拡張として「ひょうたんの家」を提案する。

ここでの衣服とは、着飾るものではなく、胎内回帰願望を叶える事を意図している。純粋さを喪失した社会との境界を確立し、身体を包み隠すという閉鎖的な機能の「衣服」なのである。

古来より精霊が宿る容器といわれ魔除けや御守りとして珍重されてきた、ひょうたん。
決して水に沈まず、神秘の力を持つ。

通行する人々の視線を壁から空へと向ける役割の曲面屋根により、この家はプライベート空間として守られている。玄関と車庫の開口のみという排他的なファサードから重厚感のある玄関扉を抜けると、外の光を感じる吹抜けと緩やかな段差の石張り廊下の空間。柔らかな趣を持ちつつも、そこは未だ中間領域に過ぎない。その先の扉に許された者だけが、ひょうたんの窪みである石庭と和室の静寂に案内され、ようやく深く暖かい聖域へと向かうことができる。

陽の光を浴び、そよ風を感じ、鳥の声を聴きながら、母胎空間の安らぎの中で全ての欲望を満たし快楽を得る。この聖域で感じるもの全ては他の部屋へと伝導され、その感触を家族が共有することとなる。

パレット型の屋根は彩り豊かな家族の育みを象徴しており、聖域の最深部に位置し記念植樹により作られる庭は後世で家族の歴史を物語る。純粋さを持った施主が自らのパレットを用いて描き続けることで、このひょうたんの家に温かく純粋な家族の歴史が刻まれる。





  


  





  



                   撮影 小野吉彦


戻る


写真・文章等の無断転載はご遠慮ください。