第1日目 10月14日(水)



9時
竹芝桟橋着。

今月忙しいのは分かっていたのだが、ここまで忙しいと己を見失いそうだ。
手荷物は今までの渡航で最も軽く、きっと何かを忘れているのだろうが、
今気付いているのはタオルくらいだ。

昨晩だけは早く帰ろうと思っていたが、結局夜遅くまで仕事をすることになり、
こんなバタバタで5泊6日の出張とは・・・。



9時30分
待合ロビーには人が少なく、その中で意外と犬連れが多いと感じる。

目の前を通る見知らぬオヤジがチケットを落とし、しゃぁないと思い、
だいぶ追いかけて「チケット落としましたよ」と声をかけたのだが、
「そうか」とだけ言って受け取られた。
礼のひとつも言わずに最低のオヤジだ。



9時40分
さっさと船に乗り込み、何時もの特等席をキープ。

11時からここで打合せをすることになっている。



10時
出航。

前回の渡航は台風で散々なモノであった。
今回は頼むぞ…と祈る気持ちである。



10時30分
打合せ資料に目を通すもメール対応に時間を取られる。

私の場合これだけ忙しいと、
「こんな生き方でいいのか?」と問う別の自分が現れる。



10時50分
打合せ前だというのに、目の前に酒を飲むオヤジ共がうるさくてイラつく。
どうみても私は仕事モードなのに、平気で話し込んでいる。



11時
打合せ開始。

ここで仕事をしている方がNGなのだろうけど、少しは静かにして欲しいモノだ。



11時半
打合せ終了。

私が観光客だったら、目の前に仕事をしている人々がいれば、
勘弁してよ・・・と思うだろう。

ここはお互い様ということで。
打合せ終了と共に、私に話しかけたそうな会話となっている。

私の持ち物の話をしたり、船中で友人ができる等・・・面倒なオヤジ共だ。



11時50分
横須賀港付近とアナウンス。


今回の渡航は疲労感を伴っているためか、
南の島に行くという気持ちの高揚はまったくない。

「どうしたんだ?」「先週のあの ○○○ のせいだろう」と自問自答。
かなりの多忙の中、ここには記せない非常に侮辱的な ○○○ を経験した。

そんな事を気にするのは小さな人間だと自分に言い聞かせようとするのだが、
やはり私は小さな人間で、月曜日に黒川先生の墓前で手を合わせながらも同じ事を考えていた。


窓から海を眺めながら、「私は一体何処で生きるべきなのか・・・」と、
答えの出ない難問が脳内を占拠する。



12時半
海上自衛隊の潜水艦が並走しているとアナウンス。
数名の客が喜んで外に出る。


そろそろ東京湾外となり波が高くなるだろう。
あまりはしゃいでいると気持ち悪くなるぞ。



13時
酒に酔った方が私に話しかける。
話し込んで気付くと15時となっていた。

2時間も烏龍茶で話せるとは思わなかった。



16時
少々船の揺れを感じるようになり、横になる。



18時半
心地よい揺れの中、2時間半も寝てしまった。

電波は圏外となっていた。



19時
カップラーメンを食す。

ここ数日、心身ともに疲労を感じ、体に力が入らない。
カップラーメンを食べても力が入らず、ソファで読書をする。



21時
ゆっくり読もうと思っていた石山修武さんの本であったが、
一気に読み終えてしまった。



内容は私が今活動している事と類似していて、
私の動きを彼が知ったら、「真似しているのか」と言われるかもしれないような本であった。

とにかく、ほとんどの生命体が人類の歴史よりも前から存在するわけで、
建築はそれを考慮した立体でなければならず、
それを伝えるメッセージであるべきだという自論がある。

石山さんは本中の表現として、
「森の中、何処に向かっているのか」という自身への問いかけをしているが、
おそらくその方向やゴールは見えているのではないか・・・と推測する。

万が一見えていなくてもそうは言わないだろう。
しかし私にはまだ森の中で何処に進めばよいのか、
そして何が答えとして得られれば己が満足するのか、
それは単なる自己満足にしかならないのではないか、
建築家として生きる事がそれらを全否定するのではないか・・・と。

自分の目指す方向に迷いがなくとも、
それを目指す事で、スタッフや友人らにも心配と迷惑をかけるかもしれないし、
すごく近くにゴールがあっても、気付かずそれに背を向けて歩んでいるかもしれない。

そんな森の中、食料はおにぎりを数個持っているだけで、
空腹で歩けなくなったら一口頂戴し、また歩み、また食べの繰り返しである。



正直、父島が世界遺産になったら私はそこを去るのだろうと感じている。
世界遺産になったら多くの著名建築家がそこで作品を残したがるだろう。
観光客も多くなり、空港が作られ環境保護団体の活動拠点になりそうだ。

世界遺産を目指すという人々の想いを胸に、
私がこの仕事に携わる事が本当に良いことなのか。



22時
クダラン事を考え、こんな時間になってしまった。


そろそろ寝る準備をしないと、
また暗闇の中、頭をブツケテ寝なければならなくなる。


今回の渡航は比較的揺れも少ない。

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